祈り

神さま、わたしがこの世に生を受けた年、1944年。 日本はアジアの全域で、世界を敵に回しての絶望的な戦争のさ中でした。 1945年、東京下町地域も八王子も、 そのほか数えきれない多くの日本中の都市とそこに住んでいた人々が、 高性能爆薬による空襲を受け、都市という都市は焼き尽くされました。 中でも広島・長崎には人類最初の原爆が投下されました。 またたとえ原爆から生き残った人々にも深刻な原爆症の恐怖を残したのでした。 ことを起こしたのはアメリカでしたが、 敗戦国となったドイツも、日本においても原爆製造は研究され、 製造が企てられていたと伝えられました。

あらためて、過去は取り消すことが出来ませんが、 わたしたちはいま、出来事をしっかりと見つめるとともに、 焼け跡の中で心に決めた不戦の誓いを固くして、 戦後、戦わない国だからこそ信頼をかち得てきた日本が、 さらにアジアの隣人達と平和を分かち合うことを得させてください。

今日はここ由木の地で、韓国、中国、ベトナムから来られた若者たちと友人とされ、 一人の人間として向かい合い、手を取り合うことが許されている今を喜びます。

ただ神さま、戦時においては何千、何万の尊い命が武器や爆弾で失われていきます。 それでも人々は、だからこそ必死で生きようと努力します。 今は日本に、戦争はありません。 それでも少なくない数の生命が、自らの手で消えてゆきます。 戦時であろうと平時であろうと、一人の命の大切さ、重さは少しも変わりません。 かつて私たちの国家は、市民に「お国のために」命をささげることを強要しました。 そうしてこの由木からも戦地に向かい、二度と帰ることができませんでした。 切実に生きることを願った人々のいた時代。 そして生きることを願いつつ、自死を選ぶ他ない人々。 この困難な時代に「生きよ」というあなたの御声を聞かせてください。

「彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。
 国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。
 ヤコブの家よ、主の光の中を歩こう。」

今こそ、 <世界が、蔑みや憎悪や戦いではなく、平和と和解と敬愛を互いの間に築けますように>

イエスキリストのおなまえによって祈ります。

(2020年08月16日 礼拝祈り)


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