原発から核兵器へ

      

 先週はある原稿の締め切りがあって私は必死でした。教団の機関紙から <三多摩教区の源流を訪ねて>という文章を書けという依頼でした。 教区長の高橋誠牧師は昔のことを知る人が少なくなったから、あなたに依頼したいということでした。 要するに年寄りが少なくなったからお前が書けということのようでした。 そう言われれば断る理由もなく、泣く泣く引き受けざるを得ませんでした。 相当な時間をかけて取り組まざるを得なかった。しかし私は新聞のある報道に心が奪われていたのです。

 それは今国連で問題になっている一つの議題に関することです。 いま地球が直面する最大の危機は核兵器に関することだと思います。誰もが、 いつ核兵器に焼かれるかもしれないということが、今ほど現実になった時はありません。 米国とロシアは言うまでもなく、インドとパキスタンの間では、カシミールの領有をめぐる争いで、 核兵器の使用がすんでのところまで立ち至ったといわれています。 そしていまは北朝鮮の行方が案じられています。

 そこで国連では核兵器の使用を法的に禁止しようと提案されているのです。 提案国の中心になっているのはオーストリアです。 すでに昨年の国連総会でオーストリアは核兵器使用の法的禁止を求めて提案を行い、 128か国がこれに賛同したのです。当然唯一の被爆国である日本は、 オーストリアの提案に全面的に協力して、共同提案国に加わっていると思いきや・・・・ 日本はこの提案を<時期尚早>として国連で反対を表明しているのです。 その中心はもちろんアメリカです。オバマ大統領は2009年にプラハで <核なき世界を>と演説し、その年ノーベル平和賞を授与されました。 バラク・オバマはミューヨークで起こっているこの現実をどうご覧になっているのだろうか。 それとも老練な政治家としての二枚舌にすぎなかったのだろうか。 朝日新聞によると(2月27日の記事)「オーストリアのクメント軍縮大使は 「核保有国は核兵器の近代化を進めていると指摘し、今世紀後半まで<つまり2100年まで> 核兵器に依存するという明確な意思表示だ」と不快感を隠さなかった」と伝えています。 日本は核保有国ではありません。核保有国どころか<世界で唯一の核被爆国>なのです。 ところがこの核兵器の非人道性を最もよく知っているはずの日本政府は核兵器の使用禁止は <時期尚早>と主張するいくつかの国の代表として国連で活動していると伝えられているのです。 ところが日本は原発から発生したプルトニウムを使えば5000発もの核爆弾を製造できると伝えられています。 そして有力な政治家や実業家から核兵器製造への失言とも本気とも取れる言葉が漏れてきます。 そして結局原発から核兵器へという方向性は決して手放さないのではという疑いが付きまといます。

 先週、電力自由化に関して東京電力の方が見えて説明に来られました。 当座の自由化で電気料金の上下があることは大した問題だとは私は思っていないのです。 しかし、わたしは次の原発事故を恐れざるを得ないのです。 それが起これば電気の供給が危機的となるばかりでなく、 電気料金も上限を知らないほど高いものになるでしょう。 そこで東京電力の方に次なる原発事故の可能性について伺ったのです。 彼の答えは「東電が次の原発事故を起こさないとは,絶対に言えません。」 確かにこの答えは正直で良心的な答えです。それなら直ちに原発を止めるべきなのです。

(2016年02月28日 週報より)


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