それでも、世界の主なるキリストを見上げよう

「もはや夜はなく、ともし火の光も太陽の光も要らない。 神である主が僕たちを照らし、彼らは世々限りなく統治するからである。」
（ヨハネ黙示録２２：５）

　この文章を書いたヨハネは囚人としてパトモスという小島に、 流刑者として日々を過ごしていました。当時ローマ帝国にあってドミティアヌス帝（在位81−96年） が皇帝礼拝に同意しない人々−つまりキリスト教徒に、空前の大迫害を加えていました。 けれどその強烈な力による弾圧を加えるローマ帝国権力もやがて破れ、 神の支配が確立することをヨハネは見つめていました。 ヨハネに示された黙示・ヴィジョンは、復活し、光り輝くキリストが勝利者として、歴史を支配し、 完成される方である存在であることを指し示します。

　黙示録には、終わりの日に新しいエルサレムが天から降ってくることが描かれ、 その神の都の中央には神と子羊の御座があります。子羊は一度は十字架にほふられたが、 神によって復活させられ、生命を与える方として永遠に支配するというのです。 この神と子羊の御座から、生命の水が流れ出て、神の都を潤し＜生命の木＞を生長させ、 豊かに果実を実らせ、その気の葉は非チビとを癒します。

　弾圧と迫害に苦しむ現実の世界と、あまりにかけ離れている世界をヨハネは夢見たかと思います。 世界はローマ帝国が神のように支配しているように見えたのです。 けれどローマ帝国は実は滅びに向かって坂を転げ落ちていました。 天にある命の川の水は、キリストを通して地上に注がれ、 信じるものに命を与える・・・ヨハネはそう呼びかけたのです。

　イエス・キリストは「私が与える水を飲む者は決して渇かない。 私が与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水が湧き出る。」 （ヨハネ4：14）といわれます。

　ヨハネによる、ローマの崩壊という壮大な夢は、見事に実現します。 しかしその後やはり暴力を底辺にした権力による支配は変わることなく継承されてゆきました。 教会さえが、その権力の何がしかを引き受けた時代もありました。 権力は自らの維持だけに必死に行動するのです。

　ヨハネの夢は、なお部分的に実現したのです。平和的な ＜神と子羊の御座＞ はやがて決定的な勝利を表すのです。 とはいえ今生きている現実が、どれほどか困難と悩みに溢れていても絶望する必要はない。 キリストは新しい力と癒しを与えたもう方です。 人は夢に生きることを放棄してはならない。

(2013年03月03日 週報より)