今週は信徒執筆です

震災被災地を訪ねて

 西村 悟郎         

 昨年(2011年)11月24−26日に震災で津波の被害を受けた岩手県大槌町浪板地区に シクラメンの鉢花を届けるボランティア活動に参加した。 恵泉女学園大学と早稲田奉仕園で共同企画され、 双方に属する学生・教職員の合計33名が参加した。 シクラメンは恵泉園芸センターが300鉢を手配した。

 24日の夜9時に新宿区高田馬場にある早稲田奉仕園を夜行バスで出発し、 7時ごろ大槌町浪板地区に着いた。 その途中、夜が明けたころバスが釜石市街を通ったが、 町並みは鉄筋の建物だけが残り、それらすべての内部が破壊されているのを見て、 被害の大きさに言葉を失った。

 浪板地区は大きな被害を受けた大槌町の市街から山を隔てた隣の入り江にある。 そこでは津波が海から10mくらいの高さもある海岸沿いの道路を超えて、 その奥の家を壊していた。 家を失った住人のために高台に100戸ほどの仮設住宅が建てられていた。

 私たちは高台にある浪板交流促進センター滞在し、 到着した朝から班に分かれて地区内の家を一戸ずつ訪ねてシクラメンを渡した。 ある家で40歳代の女性が、津波で父を失ったことを話された。 父は大槌町の海岸近くの家に一人で住んでいたが足が悪く歩けなかった。 当日の午前中に父を尋ねて、帰った後地震が起きた。あの日以来9ヶ月間、 なぜ自分は父を助けることが出来なかったのかという思いと、 それは仕方がなかったという思いが、 心の中をめぐり続けて心が晴れることがないと語られた。 震災からの回復は家や町の再建とともに、 悲しみの心に寄り添うことによってなされることを知った。

 私たちが到着すると同時に、地区の子供たちが集まってきて、 休みの時間には学生とドッジボールをした。 夕方には仮設住宅の集会所で 住民の皆さんに集まっていただいてメンバーによるコンサートを開いた。 夜は子供たちと一緒に夕食を取り、 それから学生が準備した石鹸作りをして、各自持ち帰った。 最後の日は昼前にバスが発ったが、 バスが離れると子供たちは後を追っかけて別れを惜しんだ。

 帰りに釜石市内にある新生釜石教会に寄った。 教会の周辺の建物も被害を受けていた。 震災時にはこの教会が救援ボランティアの拠点になり、 今回のプロジェクトもお世話になった。ちょうど日曜日のお昼頃だったので、 会堂で礼拝が終ったばかりの会員の皆さんに挨拶した。 教会の外見は無傷に見えたが、中は壁代わりに板が張り付けてあり、 床は厚い板が敷き詰めてあった。 その中で30名ほどの会員が礼拝を守っておられた。

 被災地では今も深刻な状況が続いている。 復興には息の長い支援が求められている。

(2012年01月08日 週報より)


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