今週は信徒執筆です

敬天愛人

 K.H.    

 1年以上前の話になりますが、大河ドラマは坂本龍馬と聞き、 龍馬の話題についていけるようにと、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読みました。 そこから幕末維新への興味が湧き(それまでは無関心だったのに)、吉田松陰、 高杉晋作、新撰組、白虎隊、江藤新平などの本を図書館で借りて読み続けました。 ネット予約で題名だけで選んでいたため、 小説だったり新書だったり記録だったりとジャンルはバラバラ。 そんなふうにしながら辿りついたのが、海音寺潮五郎の「西郷隆盛」でした。

 著者が西郷隆盛を絶賛するために書いた本なので、 多少(かなり?)偏った解釈になっているかもしれませんが、 膨大な資料に基づいていて論文といっていいほどのものでした。 山のように引用されている手紙などの資料は読み飛ばしながら、 何とか9巻まで読みました。完結する前に著者が亡くなり、 幻の10巻以降は読むことができません。 しかし著者の西郷への情熱がしっかりと伝わってきて、 よい作品になっています。

 西郷隆盛は若き日に、ある僧侶と二人で (さまざまな事情から)入水自殺を試みたことがあり、 僧侶は死に西郷は一命を取りとめるという結果になりました。 意識を取り戻した後、自殺願望との闘いがありましたが、 「天によって生かされたのであるから天命を全うすべし」 という境地に至ったそうです。そして 「天が自分を愛するように自分も人を愛する」 というところまで考えを深め、「敬天愛人」が西郷の信念となりました。

 入水自殺未遂から敬天愛人の信仰(?)を得た西郷の話には、 洗礼が象徴している「旧き我は死に、生まれ変わったのだ」 というキリスト者の思いと共通のものを感じさせられました。

 日本では自殺者数が減少に転じたとはいえ、 まだまだ死にたい人が多過ぎます。 天に生かされていることを知ってほしいと祈らずにはいられません。

(2011年01月16日 週報より)


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