聖書の地へのおもい

 最近とても気になっていることがあります。 ほかならぬバイブルランド・イスラエルで起こっていることです。 9月に入ってイスラエルのネタニヤフ首相が、イスラエルの人口の2割を占めるキリスト教徒と イスラム教徒とに向かって <イスラエルはユダヤ人国家であることに忠誠を誓うことを義務化する> として立法化が進められていると伝えられていることです。 じつは日本の新聞には、忠誠や罰則の内容・詳細については伝えられていないのです。 イスラエル人自身の中にも、国会議員の中にも、 これはあまりに極端であるとして相当異論があるようです。 しかし伝えられるところでは政権の第2勢力である <イスラエルわが家> の党首  リーバーマン外相は「ユダヤ人国家への忠誠か、市民権剥奪を!」と求めており、 すでに内閣の合意は22対8で成立し、国会に提出されるばかりとのことです。 この超強硬派のリーバーマン外相は、イスラエルからパレスチナ人を 追放することが持論の人とも伝えられています。

 1947年11月に国連総会でパレスチナ分割決議がなされるまで、 パレスチナにおいて平和な生活がおくられていたパレスチナ人が一挙にそして数度の戦争によって、 住み慣れた地を追い出されて、いまだに400万を越える人々が難民として劣悪な住環境で過ごしています。 しかもそのときにはイスラエルに割譲されなかった東エルサレム、ヨルダン川西岸区域、 ガザはイスラエル軍による厳しい占領と力を背景としたユダヤ人による間断のない植民がなされ、 パレスチナ人の権利が奪われ続けています。その上に今回のことです。

 聖書の舞台である主イエスがお生まれになったベツレヘム、 少年時代に主イエスがすごされたナザレも、ヨルダン川西岸区域―つまりパレスチナ人地区にあります。 キリスト教徒であろうと、イスラム教徒であろうと、パレスチナ人であろうと、 他の外国人であろうと、ユダヤ人としての伝統や習慣、忠誠心を持たなければ、市民権剥奪。 これを聞いた私はかつての日本の姿が重なります。韓国人であろうと、満州人であろうと、 大東亜共栄圏。臣民はすべて天皇の赤子。日本語を強要され、日本名に改名させられ、 キリスト者であっても、神社参拝を強要され、戦場に狩出されました。

 またこのニュースを解説するどの新聞でも、 かつて欧米で排除され続けたユダヤ人がなぜここまで非ユダヤ人を排除するのかと、問うのです。 ガザやヨルダン川西岸区域においては基本的な医薬品も封鎖によって入らず、 多くの手術は麻酔なしと聞いています。そこでノルウエーやトルコの人権活動家、 国会議員が支援船に医薬品を満載してガザに届けようとこころみましたが、 多くの人がイスラエル軍に殺戮され、 潘基文国連総長が国連でイスラエル非難演説を行ったのはほんの数ヶ月前のことです。

 こうした事態に対し、日本のキリスト教会は驚くほど無感覚です。 先日もある牧師婦人と話していたら、「やはりテロを行うアラブ人が悪いのです。」と語っていました。 こうしているうちに、イスラエル国会の決議によってはさらなるパレスチナの悲劇が深まることが 懸念されます。

(2010年10月24日 週報より)


戻る