今週は信徒執筆です

次作 「おっぱいの詩」について

 水野 清(由木教会員・映画プロデューサー)   

 「湖に浮かべたボートをこぐように、人は後ろ向きに未来へ入っていく。目に映るのは過去の風景ばかり、明日の景色は誰も知らない。」これはフランスの詩人バレリーの言葉です。バレリーの言葉どおりに、明日なにが起こるのか判らないまま、私たちは夜の眠りにつくのです。

 朝、目が覚めて、ふと異変に気がついた20才の女性の ? と ! の映画製作に、私は取り組みはじめています。

 ベッドから起き上がるとき、ふと胸に手をやった。その時・・・・何かが手に触れたのがわかった。「なにコレ?」結構はっきりとグリグリしている。顔を洗う時に気になって、パジャマの襟元から手をいれてじかにグリグリを触ってみた。
「こんなのいつからあった!」今まで気がつかなかったことを不思議に思うくらいの立派なシコリだった。「まさか乳がんじゃないよね」一瞬そう思ったけど、まさかこの20才という年齢ではあり得ないと即座に打ち消して「きっと脂肪かなにかの塊だろう」根拠もなくそう考えることにしたのだった。
しかし、私の右胸のしこりのレントゲン写真を見ながら、先生は、私と付き添いの父と母にこういった。「この写真を見る限り、9割の確率で悪性です」
2002年の全国の乳がん患者は15万8000人。そのうち35才未満の若年性乳がん患者はわずか数%で、20才前後の乳がん患者は、統計上は0パーセントだ。まさか、21才の私が、乳がんになるわけないじゃん!
「右側の乳房の写真の、ここに写っているのがしこりなんです。この白い粒々がありますね。これが微小石灰化というもので、このあたりが癌細胞で最長3センチくらいになっていますね」先生は、私と母と父に、静かに通告した。「がん細胞」と指し示された部分を、私たちは前のめりになって食い入るように見つめた。

 「21才の私が、どうして乳がんに!?」大原まゆ、21才の乳がん発病の瞬間で あった。10年後の生存率75%の悲運を背負って、大原まゆは絶望の札幌の街を走 る。「なにがなんでも生きるんだ!」この大原まゆのポジティブな、生存への回帰を 映画化します。20代の乳がん患者が発生した事実は、次の、20代の誰かが襲われ るかもしれない。私は映画プロデューサーの責務として、「乳がんの予防」に取り組 まねばならないと考えました。
 札幌へ飛び、大原まゆさんを取材し、乳腺専門医師の話を聞き、「乳がんの予防」 は、早期発見しか方法が無いことを知りました。
 乳がんは中年女性だけが罹る病気じゃない!日本女性の25人に1人の割合で乳がん に犯されている事実。しかも、10代、20代の若年性乳がんが急増中なのです。早 期発見、早期診断、早期治療が乳がんから命を守る唯一の方法です。
 この早期発見のための「マンモグラフィー検査」をすべての女性に受けてもらう啓発 運動として、私はこの映画を作ろうと決心したのです。

主演は、大原まゆ=平山あや。父=三浦友和。母=浅田美代子。恋人=小栗旬。 撮影開始=9月15日。完成は来年3月。全国公開は、2007年10月頃。
題名は「ココロの星〜ポーラスターを抱きしめて〜」乞ご期待!

原作・大原まゆ「おっぱいの詩」講談社刊。3冊、教会に寄付してございますので、 どなた様もご自由にお読みくださいますように。

(2006年08月13日 週報より)
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